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北極・南極の2025年3月の海氷情報

1.北極における2025年3月の海氷状況

2025年3月の北極の海氷域面積(注1)は、2月に引きつづき衛星観測史上最小規模の水準にとどまりつつも緩やかに増加し、3月20日にその年の最大面積を記録(注2)した後に減少に転じました(図1)。3月平均の海氷域面積は約1359万8300平方キロメートルとなり、衛星観測史上最も小さい値でした(図2)。これまでの最小記録は2017年の約1373万200平方キロメートルで、今回はそれを約13万190平方キロメートル下回る結果となりました。3月平均の海氷分布を見ると、オホーツク海、ベーリング海、バレンツ海、ラブラドール海で平年(2010年代平均)よりも海氷域面積が小さかったことがわかります(図3)。3月平均の大気条件を見ると、ハドソン湾やオホーツク海北部からベーリング海にかけては気温が平年より低くかった一方で、それ以外の海域では暖かかったことがわかります(図4左)。また、北極海上はボーフォート高気圧に覆われ、アラスカ湾やバレンツ海からグリーンランド南側にかけては低気圧の影響が及んでいました(図4右)。このような大気循環や局所的な気象条件は、海域ごとの海氷変動に影響を与えたと考えられます。

図1:北極海氷域面積の変化(1月1日〜5月31日)。青色実線:2025年(但し、4月5日まで)、金色実線:1979年から2024年までの46年間で海氷域面積の年間最大値が1番目に小さかった2017年、黒色波線:2010年代(2010〜2019年)平均。縦棒:2025年の年間最大面積を記録した3月20日。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図2:3月の北極海氷域面積の変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用し、データ数が少なかった1980〜1981年と1983〜1986年については平均値の計算をせずに欠測とした。


図3:北極における2025年3月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


図4:(左)3月平均の925hPa面の気温偏差(℃、カラー)と気温(コンター)の分布。(右)3月平均の海面更正気圧(hPa)の分布。気温偏差は、平年(2010年代(2010〜2019年)平均)からの差と定義している。


2.南極における2025年3月の海氷状況

南極では、2025年2月23日に年間最小の海氷域面積を記録(注2)した後、海氷域面積は増加に転じ、3月中旬以降は2010年代平均とほぼ同様のペースで拡大に向かいました(図5)。その結果、3月平均の南極海氷域面積は、約325万9300平方キロメートルとなり、過去5番目に小さい値でした(図6)。3月平均の海氷分布を見ると、ウェッデル海、アムンゼン海、ロス海で海氷域の拡大傾向が見られますが、ベリングスハウゼン海では海氷が依然として形成されていない状況です(図7)。こうした海域ごとの差異は、南極の海氷形成における複雑なメカニズムを示唆している可能性があり、継続的な海氷変動のモニタリングが重要です。

図5:南極海氷域面積の変化(1月1日〜5月31日)。青色実線:2025年(但し、4月5日まで)、黄色実線:海氷域面積の年間最小値が1番目に小さかった2023年、黒色波線:2010年代(2010〜2019年)平均。縦棒:2025年の年間最小値を記録した2月23日。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図6:3月の南極海氷域面積の変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用し、データ数が少なかった1980〜1981年と1983〜1986年については平均値の計算をせずに欠測とした。


図7:南極における2025年3月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。2日平均の速報値は、ADSをご参照ください。

注2:北極海氷域面積は、2025年3月20日に年間最大値としては1979年の衛星観測開始から最も小さい面積(1379万平方キロメートル)となりました。近日中にプレスリリースを予定しています。

注3:北極・南極の2月の海氷状況(https://asic.nipr.ac.jp/info/2025-03-21-01/)をご覧ください。