北極・南極の2025年9月の海氷情報
1.北極における2025年9月の海氷状況
北極の海氷域面積(注1)は、8月下旬に2010年代平均を上回って推移し、9月7日に2025年の年間最小を記録しました(図1)。その後、海氷は緩やかに増加に転じ、終始2010年代平均より多い状態を維持しています。9月平均の海氷域面積は約469万平方キロメートルで、前年(2024年)より約48万平方キロメートル多く、衛星観測開始以来13番目に小さい値でした(図2)。海域別に見ると(図3)、東シベリア海では8月に続き、2010年代平均よりも海氷域が広い状態でした。一因として、ロシア沿岸域(カラ海、ラプテフ海、東シベリア海)で平年より気温が低かったことにより、海氷の後退が抑制されたことが考えられます(図4左)。一方、グリーンランド東岸沖、バレンツ海、カラ海北側にかけては、平年より気温が高かったことおよび南寄りの風が入りやすい気圧配置の影響で、2010年代平均よりも海氷後退が進みました(図4右)。
2.南極における2025年9月の海氷状況
南極の海氷域面積は、9月に入って拡大ペースが鈍化し、9月15日に2025年の最大面積を記録しました(図5)。その後は緩かに減少に転じ、9月平均の海氷域面積は約1769万平方キロメートルとなりました。これは前年(2024年)より約58万平方キロメートル多いものの、衛星観測史上3番目に小さい水準です(図6)。海域別に見ると、ウェッデル海とロス海では2010年平均に近い水準まで達している一方、ベリングスハウゼン海およびインド洋セクター(リーセル・ラーセン海、コスモノート海)から太平洋セクターにかけては、海氷拡大が進みませんでした(図7)。
今後の見通し
北極では融解期が終わり、秋の再結氷期が始まりました。一方、南極では年間最大を迎えた後、融解期へと移行しています。北半球・南半球ともに、今後も継続的な海氷変動のモニタリングと要因分析が重要です。
注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。2日平均の速報値は、ADS をご参照ください。
注2:NCEP-NCAR Reanalysis 1
米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)で開発・提供されている大気再解析データ(https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.ncep.reanalysis.html、Kalnay et al. (1996))。
参考文献
Kalnay et al., The NCEP/NCAR 40-year reanalysis project, Bull. Amer. Meteor. Soc., 77, 437-470, 1996
