北極・南極の2025年10月の海氷情報
1.北極における2025年10月の海氷状況
北極の海氷域面積(注1)は、10月上旬に拡大速度が鈍化し、10月9日には2010年代の平均を下回りました。その後、海氷域面積は2012年とほぼ同じ推移で拡大を続けましたが、10月末時点では観測史上3番目に小さい水準となりました(図1)。一方、10月の月平均海氷域面積は約624万平方キロメートルで、前年(2024年)より約44万平方キロメートル多かったものの、衛星観測開始以来では8番目に小さい値でした(図2)。海域別に見ると(図3)、東シベリア海東部では2010年代平均よりも広い海氷域が見られた一方で、バレンツ海からカラ海にかけては海氷の拡大が遅れていました。この要因の一つとして、バレンツ海やカラ海を含む大西洋側の北極海で平年より気温が高かったことに加え、ロシア陸域で高気圧、バレンツ海付近で低気圧が卓越する気圧配置となっていたことが挙げられます。この気圧配置に伴う南寄りの風により、海氷の拡大が抑制されたと考えられます(図4)。
2.南極における2025年10月の海氷状況
南極の海氷域面積は、10月に入ってからも緩やかに減少を続け、期間を通じて観測史上3番目に小さい水準で推移しました(図5)。10月の月平均海氷域面積は約1703万平方キロメートルとなり、前年(2024年)より約44万平方キロメートル多いものの、衛星観測史上3番目に小さい値となりました(図6)。海域別に見ると、ベリングスハウゼン海やコスモノート海沖のインド洋セクター海域では2010年代平均よりも海氷が少ない状態が続いた一方で、その他の海域では2010年代と同程度の水準でした(図7)。
今後の見通し
北極では本格的な結氷期に入り、南極では融解期へと移行しています。今後も、北半球・南半球の双方で海氷変動の継続的なモニタリングと要因分析が重要です。
注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。2日平均の速報値は、ADS をご参照ください。
注2:NCEP-NCAR Reanalysis 1
米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)で開発・提供されている大気再解析データ(https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.ncep.reanalysis.html、Kalnay et al. (1996))。
参考文献
Kalnay et al., The NCEP/NCAR 40-year reanalysis project, Bull. Amer. Meteor. Soc., 77, 437-470, 1996
