2018年第二報
2018.06.28 東京大学大気海洋研究所 木村詞明, 羽角博康

- 北極海の海氷面積は9月の最小期に約477万平方キロメートルまで縮小する見込みです。これは昨年の最小時とほぼ同じ面積です。
- 北極海の海氷面積は9月の最小期に約477万平方キロメートルまで縮小する見込みです。これは昨年の最小時とほぼ同じ面積です。
- ロシア側の北東航路では8月15日頃、多島海を除くカナダ側の沿岸では7月15日頃に海氷が岸から離れ、両側ともに航路が開通するでしょう。


最小期にあたる9月11日の海氷域面積の予測値は、第一報での予測値より若干大きい約477万平方キロメートルです。これは昨年とほぼ同じ(2パーセント大きい)面積です。最小時の海氷域は昨年とよく似た分布になります。
・ロシア側海域の特徴
ラプテフ海での海氷域の後退は、昨年並みかやや速く進行します。東シベリア海では8月中旬までは昨年よりもゆっくりと、それ以降は昨年と似た分布を保ちながら海氷域が後退すると予想されます。また、海氷が遅くまで残りやすいラプテフ海西のセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島付近の海氷後退が昨年よりも速いことから、海氷が大陸から離れロシア側の開水面域がつながるのは、昨年より少し早い8月15日頃と予想されます
・カナダ側海域の特徴
チャクチ海からボーフォート海のカナダ沿岸にかけて、昨年とほぼ同じ速さで海氷域が後退します。北アメリカ大陸沿岸は、昨年とほぼ同じ7月15日頃に開水面域がつながり、航路が開通する見込みです。
予測方法は第一報とほぼ同じで、冬季の海氷の動きを追跡する期間を5月31日まで延長したものです。
毎日の予測図は国立極地研究所の北極域データアーカイブでも見ることができます。
試行:多年氷の分布予測

白い部分が海氷域。その中の赤い部分が多年氷域を示す。
海氷面積が最小となる9月を越えて翌年まで残った氷を多年氷といいます。
今回は海氷密接度だけでなく、多年氷の分布を予測することを試みました。厚い多年氷の分布がわかれば、北極航路の安全な航行のためにも有益な情報となります。
※ここでは前年の夏を越えた氷を多年氷としています。
4月末の多年氷分布と10月はじめの多年氷分布の間には高い相関関係があります。そこで2005年以降の両者の関係をもとに、今年の4月末の多年氷分布から10月の多年氷分布を予測しました。
図4は10月1日の海氷分布と多年氷分布の予測図です。これを見ると、多年氷はカナダ多島海からグリーンランドよりの海域に分布していることがわかります。
この予測にはEuropean Organisation for the Exploitation of Meteorological Satellites (EUMETSAT) のOSI SAFにによるSea ice typeデータhttp://www.osi-saf.org/?q=content/global-sea-ice-type-cを用いました。
データの利用可能期間の関係から、今回は夏季(7−9月)の多年氷分布の予測は行いませんでした。7月末に公開予定の第三報では、独自に通年の多年氷データを作成し、それをもとに8月から10月までの多年氷分布の予測を行う予定です。
北極海の衛星モニタリングや海氷予報、ここで用いた予測手法についてのご質問は北極海氷情報室(sea_ice@nipr.ac.jp)までお問い合わせください。
この基礎となる研究はGRENE北極気候変動研究事業から始まりました。北極海氷予測は、2015年から始まった北極域研究推進プロジェクト(ArCS)でも実施されました。