2020年第三報
2020.07.30 東京大学大気海洋研究所 木村詞明, 羽角博康

- 北極海の海氷域面積は9月の最小期に約423万平方キロメートルまで縮小する見込みです。これは昨年とほぼ同じで、2012年に次いで観測史上2番目に小さい面積です。



海氷最小期にあたる9月10日の北極海氷域面積は、約423万平方キロメートルになると予想されます。これは昨年および2016年とほぼ同じで、観測史上2番目に小さな面積です。
現在、北極海の海氷域面積は観測史上もっとも速いペースで減少しています。これはシベリア側のラプテフ海周辺域で海氷域が急速に後退したためです。今後はこのシベリア側での急速な海氷後退は落ち着いてきます。
一方で、アラスカ側のボーフォート海では現在まで海氷域の後退があまりすすんでいませんでした。これはこの海域が厚い多年氷で覆われていたため(図5)と考えられます。しかし、8月上旬にはアラスカ側海域でも急速に海氷域が縮小する見込みです。



この予測は、7月15日時点での海氷密接度および海氷日齢と、8月以降の海氷密接度との関係をもとにして行いました。データは人工衛星搭載の国産マイクロ波放射計AMSR-EおよびAMSR2によって得られた2003年以降のものを用いています。また、この期間での海氷密接度の長期変化傾向も考慮に入れています。
毎日の予測図は国立極地研究所の北極域データアーカイブでも見ることができます。
北極海の衛星モニタリングや海氷予報、ここで用いた予測手法についてのご質問は海氷情報室(sea_ice@nipr.ac.jp)までお問い合わせください。
この予測およびその基礎となる研究は、GRENE北極気候変動研究事業から始まり、北極域研究推進プロジェクトに引き継がれ、2020年度からは北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)で実施しています。