2024年第三報
2024.07.31 北極海氷情報室、木村詞明(東京大学大気海洋研究所)

- 北極海の海氷域面積は9月の最小期に約470万平方キロメートルまで縮小する見込みです。 これは、2021年、2022年とほぼ同等の値です。
- ロシア側の北東航路では8月19日頃に海氷が岸から離れ航路が開通する見込みです。多島海を除くカナダ側では7月20日に航路が開通しました。


色のついた線は過去二年分の密接度20%の位置を示す。

赤が例年より早く海氷がなくなる場所、青は遅くまで海氷の残る場所を示す。
海氷最小期にあたる9月10日の北極海氷域面積は、約470万平方キロメートルと予想されます。これは2021年、2022年とほぼ同等の値です。
ロシア沿岸、カナダ側海域の海氷域の後退は2023年とほぼ同じペースで進行します。
ロシア側海域
東シベリア海の海氷域は8月下旬までは2023年に近い形で後退し、9月の最小期の海氷域面積は2023年よりも大きく、2022年よりも小さくなる見込みです。 カラ海からラプテフ海にかけての海氷域は8月1日時点で2022年、2023年よりも小さくなり、その傾向は最小期まで続く見込みです。 最近21年間の平均値と比較すると、東シベリア海、カラ海では例年よりも遅く、ラプテフ海では早く海氷がなくなります。 海氷が海岸から離れて開放水面域がつながり航路が開通するのは、8月19日頃と予想されます。
カナダ側海域
チュクチ海からボーフォート海にかけてのアラスカ沖海域では、2022年とほぼ同じ速さで海氷域が後退します。この海域の海岸沿いの航路は7月20日頃にすでに開通しています。
今回の予報は「7月の海氷密接度の年変動」と、「夏季の海氷密接度の年変動」の関係を用いて行いました。 日々の海氷密接度の予測値データはこちらから、 日々の海氷年齢分布データはこちらからダウンロードできます。
毎日の 予測図 及び 海氷齢(日齢、年齢)は国立極地研究所の北極域データアーカイブシステム(ADS)でも見ることができます。
北極海の衛星モニタリングや海氷予報、ここで用いた予測手法についてのご質問は海氷情報室(
)までお問い合わせください。
この予測およびその基礎となる研究は、GRENE北極気候変動研究事業から始まり、北極域研究推進プロジェクトに引き継がれ、2020年度からは北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)で実施しています。