EN

北極海氷情報

  1. HOME
  2. 北極海氷情報
  3. 月刊海氷情報
  4. 北極・南極の2025年4月の海氷情報

北極・南極の2025年4月の海氷情報

1.北極における2025年4月の海氷状況

2025年4月の北極の海氷域面積(注1)は、4月中旬頃まで約1340万平方キロメートルで推移していましたが、4月下旬からは2010年代平均に沿うように減少が始まりました(図1)。4月平均の海氷域面積は約1320万5700平方キロメートルで、これは衛星観測史上7番目に小さい値です(図2)。これまでの最小記録は2019年の約1283万9500平方キロメートルであり、今回はこれを約36万6200平方キロメートル上回る結果となりました。海域別に見ると、オホーツク海、ベーリング海、バフィン湾からラブラドール海にかけては、平年(2010年代平均)よりも海氷域面積が小さくなりました(図3)。これらの海域では、4月の平均気温が平年より1〜4℃高く、海氷の融解が進んだと考えられます(図4左)。一方で、グリーンランド海とバレンツ海(ノバヤゼムリャ付近を除く)では、平年と比べてやや海氷域面積が大きかったことがわかります(図3)。これは、北極海上の高気圧とカラ海上の低気圧に伴う北寄りの風系により冷気が流れ込み、バレンツ海を中心に気温が2〜5℃低かったことが影響したと考えられます(図4)。

図1:北極海氷域面積の変化(1月1日〜5月31日)。青色実線:2025年(但し、5月3日まで)、金色実線:1979年から2025年までの47年間で4月平均の海氷域面積が1番目に小さかった2019年、黒色実線:最も小さい北極海氷域面積を記録した2012年、黒色波線:2010年代(2010〜2019年)平均。縦棒:2025年の年間最大面積を記録した3月20日。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図2:4月の北極海氷域面積の変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用し、データ数が少なかった1980年と1985〜1987年については平均値の計算をせずに欠測とした。


図3:北極における2025年4月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


図4:(左)4月平均の925hPa面の気温偏差(℃、カラー)と気温(コンター)の分布。(右)4月平均の海面更正気圧(hPa)の分布。気温偏差は、平年(2010年代(2010〜2019年)平均)からの差と定義している。この図では、NCEP-NCAR Reanalysis 1(注2)のデータを使用した。


2.南極における2025年4月の海氷状況

2025年4月の南極の海氷域面積は、2024年と同程度のペースで拡大しながら推移しました(図5)。4月平均の南極海氷域面積は、約628万2500平方キロメートルとなり、過去9番目に小さい値でした(図6)。海域別の特徴を見ると、アムンゼン海では平年より海氷域の拡大が早く進んだ一方、ウェッデル海やロス海では海氷域の拡大がやや遅くれており、海域差が見られました(図7)。また、ベリングスハウゼン海では、前月に続いて海氷の少ない状況が継続しています。

図5:南極海氷域面積の変化(1月1日〜5月31日)。青色実線:2025年(但し、5月3日まで)、金色実線:1979年から2025年までの47年間で4月平均の海氷域面積が1番目に小さかった2017年、黒色実線:最も小さい南極海氷域面積を記録した2023年、黒色波線:2010年代(2010〜2019年)平均。縦棒:2025年の年間最小値を記録した2月23日。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図6:4月の南極海氷域面積の変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用し、データ数が少なかった1980年と1985〜1987年については平均値の計算をせずに欠測とした。


図7:南極における2025年4月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。2日平均の速報値は、ADSをご参照ください。

注2:NCEP-NCAR Reanalysis 1 米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)で開発・提供されている大気再解析データ(https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.ncep.reanalysis.html、Kalnay et al. (1996))。

参考文献
Kalnay et al.,The NCEP/NCAR 40-year reanalysis project, Bull. Amer. Meteor. Soc., 77, 437-470, 1996