北極・南極の2025年6月の海氷情報
1.北極における2025年6月の海氷状況
2025年6月の北極の海氷域面積(注1)は、上旬までは2010年代の平均とほぼ同じペースで減少していましたが、中旬以降は2016年や2020年の値を下回り、衛星観測史上最も小さい面積で推移しました(図1)。月平均の海氷域面積は約996.34万平方キロメートルで、前年(2024年)よりも約26.58万平方キロメートル小さく、衛星観測開始以来2016年に次いで2番目に小さい値となりました(図2)。図3に示す海氷域および海氷密接度の空間分布を見ると、オホーツク海とベーリング海の海氷はほぼ消失しています。一方、グリーンランド沖からバレンツ海・カラ海にかけての大西洋側、ならびにバフィン湾やハドソン湾には海氷が依然として残存しているものの、広い範囲で低密接度の海域であることがわかります。また、チュクチ海では2010年代平均よりも海氷の後退が遅れており、ラプテフ海でも先月から大きな後退は見られませんでした。6月の平均気温を見ると、ラプテフ海上では平年よりも4〜6℃低く、これにより海氷の融解が抑えられたと考えられます(図4)。6月の平均としては衛星観測開始以降2番目に小さい海氷域面積でしたが、6月19日以降は観測史上最も小さい面積での推移が続いています(図1)。今後の大気循環に伴う気温や風の変化が、海氷融解の進行にどのように影響するか、引き続き注意深く見守る必要があります。



2.南極における2025年6月の海氷状況
2025年6月の南極の海氷域面積は、2010年代の平均とほほ同じペースで拡大しました(図5)。6月の月平均の海氷域面積は約1224.88万平方キロメートルで、前年(2024年)より約32.66万平方キロメートル多く、衛星観測開始以来3番目に小さい値となりました(図6)。図7に示す海域別の分布を見ると、ウェッデル海、ロス海、アムンゼン海では、ほぼ2010年代平均の水準まで海氷が拡大しています。一方で、リーセル・ラーセン海およびベリングスハウゼン海では、先月と比べて海氷域は広がったものの、海氷密接度は依然として低く、これらの海域における今後の海氷変動については継続的なモニタリングが必要です。


注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。2日平均の速報値は、ADSをご参照ください。
注2:NCEP-NCAR Reanalysis 1 米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)で開発・提供されている大気再解析データ(https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.ncep.reanalysis.html、Kalnay et al. (1996))。
参考文献
Kalnay et al.,The NCEP/NCAR 40-year reanalysis project, Bull. Amer. Meteor. Soc., 77, 437-470, 1996