北極・南極の2025年8月の海氷情報
1.北極における2025年8月の海氷状況
北極の海氷域面積(注1)は、8月1日時点で観測史上5番目に小さい規模でしたが、8月上旬以降に減少ペースが鈍化し、2010年代平均と重なるように推移しました(図1)。月平均の海氷域面積は約529万平方キロメートルと前年(2024年)より約28万平方キロメートル多いものの、衛星観測史上7番目に小さい値です(図2)。海域別に見ると、グリーンランド東側からバレンツ海・カラ海北側にかけての海氷域は2010年代平均より縮小した一方、東シベリア海やボーフォート海では2010年代平均を上回る海氷域が広がっていました(図3左)。大気場の特徴として、カラ海からバレンツ海付近に高温偏差、チュクチ海北側海域を中心に低温偏差が確認されました(図4左)。また、カラ海からラプテフ海付近に高気圧、北極海中央部に低気圧が位置し、典型的なダイポール構造の海面気圧配置が形成されていました(図4右)。その結果、バレンツ海・カラ海北側では暖かい南寄りの風が吹き込み海氷後退を促した一方、東シベリア海では北寄りの風が卓越して海氷が沿岸付近にとどまる要因となったと考えられます。9月に入り、北極の海氷域面積は年間で最も小さい時期を迎えます。



2.南極における2025年8月の海氷状況
南極の海氷域面積は、先月と同様に月を通じて2023年・2024年に次いで観測史上3番目に小さい水準で推移しながら拡大を続けました(図5)。月平均の海氷域面積は約1657万平方キロメートルで、前年(2024年)より約11万平方キロメートル多いものの、衛星観測開始以来では依然として小さい水準にとどまっています(図6)。海域別に見ると、リーセル・ラーセン海の北東部・ベリングスハウゼン海・太平洋側では、依然として海氷域が小さく、海氷密接度も低い状態が続いていますが、それ以外の海域ではほぼ2010年代平均の水準に達していることが確認されます(図7)。南極の海氷域面積は、9月に年間で最も大きくなる時期を迎えます。今後の大気循環に伴う気温や風の変化が、海氷の広がりにどのような影響を与えるか引き続き注視していく必要があります。


注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。2日平均の速報値は、ADSをご参照ください。
注2:NCEP-NCAR Reanalysis 1 米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)で開発・提供されている大気再解析データ(https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.ncep.reanalysis.html、Kalnay et al. (1996))。
参考文献
Kalnay et al.,The NCEP/NCAR 40-year reanalysis project, Bull. Amer. Meteor. Soc., 77, 437-470, 1996