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北極・南極の2025年11月の海氷情報

1.北極における2025年11月の海氷状況

11月の北極の海氷域面積(注1)は、日々の値が観測史上2〜3番目に小さい水準で推移していましたが、11月25日にはこれまでの最小値であった2016年を下回りました(図1)。その結果、11月の月平均海氷域面積は約859万平方キロメートルとなり、前年(2024年)より約31万平方キロメートル減少して衛星観測開始以来2番目に小さい値となりました(図2)。海域別に見ると(図3)、バレンツ海からカラ海、さらにバフィン湾からハドソン湾にかけての海域で、2010年代平均よりも海氷が少ない状態でした。特にバフィン湾では、海氷域面積が過去最小で推移しました。11月は、北極海上に高気圧が分布し、ベーリング海やバレンツ海・ラブラドール海周辺には低気圧が位置する気圧パターンが形成され、バフィン湾付近では南東寄りの風が吹きやすく、比較的温かい空気が流れ込みやすい状況となりました(図4)。また、バフィン湾とハドソン湾では2010年代平均と比べて海面水温も高く、こうした温かい条件が重なったことで海氷の形成や拡大が進みにくい状況となっていたと考えられます(図5)。一方、ロシア北部からラプテフ海・東シベリア海にかけては低温傾向が続き、この海域では海氷拡大が進みました。

図1:北極海氷域面積の変化(8月1日〜12月31日)。赤色実線:2025年(但し、12月3日まで)、金色実線:2016年、黒色実線:1979年から2025年までの47年間で海氷域面積の年間最小値が最も小さかった2012年、黒色破線:2010年代(2010〜2019年)平均。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図2:11月平均の北極海氷域面積の経年変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図3:北極における2025年11月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


図4:(左)11月平均の925hPa面の気温偏差(℃、カラー)と気温(コンター(等値線))の分布。(右)11月平均の海面更正気圧(hPa、カラー)と925hPa面の風ベクトル(矢印)の分布。気温偏差は、平年(2010年代(2010〜2019年)平均)からの差と定義している。この図では、NCEP-NCAR Reanalysis 1(注2)のデータを使用した。


図5:11月平均の海面水温偏差(℃、カラー)の分布。黒色領域は海氷域を表している。海面水温偏差は、平年(2010年代(2010〜2019年)平均)からの差と定義している。この図では、ADS で公開されているAMSR-EおよびAMSR2で観測された海面水温データを使用した。


2.南極における2025年11月の海氷状況

南極では融解期が進む中、11月の日々の海氷域面積は緩やかに減少し、中旬から下旬にかけては2023年とほぼ同じ推移となりました(図6)。その結果、11月の月平均海氷域面積は約1463万平方キロメートルで、前年(2024年)より約42万平方キロメートル多かったものの、衛星観測開始以降では4番目に小さい規模にとどまりました(図7)。海域別に見ると、ウェッデル海やロス海を含む太平洋セクターでは概ね平年(2010年代平均)並みで、リーセル・ラーセン海では平年を上回る海氷が維持されました。一方、ベリングスハウゼン海・アムンゼン海や、コスモノート海沖のインド洋セクターでは、平年より少ない状態でした(図8)。

図6:南極海氷域面積の変化(8月1日〜12月31日)。赤色実線:2025年(但し、12月3日まで)、黒色実線:1979年から2025年までの47年間で海氷域面積の年間最小値が最も小さかった2023年、黒色破線:2010年代(2010〜2019年)平均。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図7:11月平均の南極海氷域面積の変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図8:南極における2025年11月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。

注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。2日平均の速報値は、ADS をご参照ください。

注2:NCEP-NCAR Reanalysis 1
米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)で開発・提供されている大気再解析データ(https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.ncep.reanalysis.html、Kalnay et al. (1996))。

参考文献
Kalnay et al., The NCEP/NCAR 40-year reanalysis project, Bull. Amer. Meteor. Soc., 77, 437-470, 1996