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北極・南極の2025年12月の海氷情報

1.北極における2025年12月の海氷状況

12月の北極の海氷域面積(注1)は、月末の数日を除き、概ね月を通して観測史上最も小さい水準で拡大を続けました(図1)。その結果、12月の月平均海氷域面積は約1083万平方キロメートルとなり、これまで最も少なかった2024年より約17万平方キロメートル(北海道約2つ分に相当)減少し、衛星観測開始以来で最も小さい値となりました(図2)。海域別にみると(図3)、バレンツ海とバフィン湾で2010年代平均よりも海氷が少なく、特にバレンツ海北西部では依然として開放水面域が広がっている状況です。また、ハドソン湾は全面的に海氷で覆われているものの、11月(注2)の暖かさの影響を受けて結氷が遅れ、海氷密接度が低い状況となっています(図3右)。12月の大気場をみると(図4)、バレンツ海から北極海大西洋側にかけて気温が2010年代平均より高く、同海域では南から南西寄りの風が吹きやすい状況となっていました。このため、バレンツ海北西部では暖かい空気の流入が続き、開放水面が広く残るなど、海氷の形成が進みにくい状態が維持されたと考えられます。その結果、バレンツ海における12月平均の海氷域面積は約13万平方キロメートルとなり、観測史上最も小さい値となりました(図5)。これは2024年と比べて約12万平方キロメートル少なく、バレンツ海の海氷域面積の大幅な減少が12月の北極海氷域面積の最小記録更新につながったことを示しています。一方、他の海域では、海氷の拡大は概ね2010年代平均に近い状態でした。なお、バレンツ海における海氷変動は中緯度域の気象・気候と関連することが指摘されており(注3)、今冬の日本の気象状況との関係についても注視する必要があります。

図1:北極海氷域面積の変化(10月1日〜2月29日)。赤色実線:2025-2026年(但し、1月1日まで)、金色実線:2024-2025年、黒色実線:2012-2013年(2012年は1979年から2025年までの47年間で海氷域面積の年間最小値が最も小さかった年)、黒色破線:2010年代(2010〜2019年)平均。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図2:12月平均の北極海氷域面積の経年変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。本記事では、データ数が少なかった1979-80年、1982年、1985-1987年については、平均値の計算をせずに欠測とした。


図3:北極における2025年12月平均の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


図4:(左)2025年12月平均の925hPa面の気温偏差(℃、カラー)と気温(コンター(等値線))の分布。(右)2025年12月平均の海面更正気圧(hPa、カラー)と925hPa面の風ベクトル(矢印)の分布。気温偏差は、平年(2010年代(2010〜2019年)平均)からの差と定義している。この図では、NCEP-NCAR Reanalysis 1(注4)のデータを使用した。


図5:バレンツ海における12月平均の海氷域面積の経年変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。本記事では、データ数が少なかった1979-80年、1982年、1985-1987年については、平均値の計算をせずに欠測とした。


2.南極における2025年12月の海氷状況

南極の海氷域面積は、12月に入ってから減少速度がやや鈍化したものの、中旬以降は2023年とほぼ同じ水準で推移しました(図6)。その結果、12月の月平均海氷域面積は約925万平方キロメートルとなり、前年(2024年)より約16万平方キロメートル少なく、過去7番目に小さい値となりました(図7)。海域別にみると(図8)、インド洋セクターおよびベリングスハウゼン海では2010年代平均より海氷が少ない状態でした。一方、その他の多くの海域では概ね2010年代平均水準となっています。ただし、リーセル・ラーセン海域では海氷域面積は2010年代平均と同程度であるものの、海氷密接度が低く、今後の気象条件次第では海氷の融解が一気に進む可能性があります。

図6:南極海氷域面積の変化(10月1日〜2月29日)。赤色実線:2025-2026年(但し、1月1日まで)、黒色実線:2023-2024年(2023年は1979年から2025年までの47年間で海氷域面積の年間最小値が最も小さかった年)、黒色破線:2010年代(2010〜2019年)平均。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図7:12月平均の南極海氷域面積の変化(1979年から2025年までの47年間)。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。本記事では、データ数が少なかった1979-80年、1982年、1985-1987年については、平均値の計算をせずに欠測とした。


図8:南極における2025年12月平均の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代(2010〜2019年)平均の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。

注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。2日平均の速報値は、ADS をご参照ください。

注2:北極・南極の2025年11月の海氷情報

注3:ノルウェーの北に位置するバレンツ海で海氷が少ない状態が続くと、低気圧の経路が平年より北寄りになりやすく、北極海へ暖かい空気が流れ込みやすくなることが指摘されています。このような状況は、北極域の気温上昇を促す一因となります。一方で、ユーラシア大陸上ではシベリア高気圧の勢力が強まりやすく、冷たい空気が東アジアへ流れ込みやすくなるため、日本を含む地域で寒冷な気象条件が現れやすくなると考えられています。このような「北極域の温暖化」と「ユーラシア大陸の寒冷化」が同時に現れるパターンは、バレンツ海(およびカラ海)における海氷減少と関連していることがこれまでの研究で報告されています。詳細は例えば下記文献をご参照ください。

  1. Inoue, J., M.E. Hori, and K. Takaya, 2012: The role of Barents Sea ice in the wintertime cyclone track and emergence of a warm-Arctic cold-Siberian anomaly, Journal of Climate, 25, 2561-2568, https://doi.org/10.1175/JCLI-D-11-00449.1
  2. Mori, M., M. Watanabe, H. Shiogama, J. Inoue, and M. Kimoto, 2014: Robust Arctic sea-ice influence on the frequent Eurasian cold winters in past decades, Nature Geoscience, 7, 869-873, https://doi.org/10.1038/ngeo2277

注4:NCEP-NCAR Reanalysis 1
米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)で開発・提供されている大気再解析データ(https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.ncep.reanalysis.html、Kalnay et al. (1996))。

参考文献
Kalnay et al., The NCEP/NCAR 40-year reanalysis project, Bull. Amer. Meteor. Soc., 77, 437-470, 1996