2025年第三報
2025.07.18 木村詞明(東京大学大気海洋研究所)、北極海氷情報室

- 1 北極海の海氷域面積は、9月に約442万平方キロメートルまで縮小する見込みです。
- 2 ロシア側の北東航路は8月下旬、多島海を除くカナダ側では7月中に航路が開通するでしょう。



この予報の海氷分布は、6月末の海氷の厚さをもとに計算しました。2007年から2024年までの観測データを使い、各年の「6月30日の海氷厚」と「8月以降の海氷密接度(海面が海氷で覆われている割合)」との関係を調べた結果、6月末に海氷が厚かった場所では、夏になっても海氷が解け残りやすい傾向があることがわかりました。この傾向にもとづいて、今年(2025年)の6月30日に観測された海氷厚から、8月1日以降の海氷密接度を予測しています。
予測に使用した海氷厚は、人工衛星搭載の日本のマイクロ波放射計AMSR-EおよびAMSR2の観測値から、独自の手法で推定したものです(手法に関する論文は現在投稿中で、こちらのサイト:https://egusphere.copernicus.org/preprints/2025/egusphere-2025-3286/で見ることができます)。この海氷厚データは、近日中に国立極地研究所のADS(Arctic Data archive System)から公開される予定です。
現在の状況


毎日の 予測図 及び 海氷齢(日齢、年齢)は国立極地研究所の北極域データアーカイブシステム(ADS)でも見ることができます。
北極海の衛星モニタリングや海氷予報、ここで用いた予測手法についてのご質問は海氷情報室(
)までお問い合わせください。
この予測およびその基礎となる研究は、GRENE北極気候変動研究事業から始まり、北極域研究推進プロジェクトに引き継がれ、2020年度からは北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)で実施しています。