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北極・南極の2024年12月の海氷情報

1.北極における2024年12月の海氷状況

2024年12月の海氷域面積(注1)は、12月上旬から2016年(12月の海氷域面積最小年)を下回る状態で推移しました(図1)。 その結果、平均海氷域面積は11.0012百万平方キロメートルとなり、12月の海氷域面積最小記録を更新しました(図2)。 2024年12月の海氷分布を見ると、バレンツ海、オホーツク海、ハドソン湾で特に海氷が少ないことがわかります(図3)。 12月の北極域ではグリーンランドとカナダ多島海の北部海域を中心に気温の高い状態(30年平均よりも8から10℃程度)が続き、 ハドソン湾東部も暖かい状態でした(図4)。このことが初冬の海氷成長を抑制して最小記録更新に影響を与えたと推察されます。 北極では通常3月に年間最大の海氷域面積を記録しますが、12月のような気象条件が続く場合、 年間最大面積の最小記録更新の可能性も懸念されるため、今後の海氷状況を注視してみてゆく必要があります。

図1:北極海氷域面積の変化。黒色波線:2010年代平均(2010年から2019年までの10年平均)、黒色実線:2012年10月1日から2013年2月28日まで、 橙色実線:2016年10月1日から2017年2月28日まで、赤色実線:2024年10月1日から2025年1月4日までを示している。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図2:12月の北極海氷域面積の変化(1979年から2024年までの46年間)。本記事では、1987年12月の海氷域面積のデータ数が2日間のため、平均値の計算をせずに欠測とした。


図3:北極における2024年12月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代平均(2010年から2019年までの10年平均)の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


図4:大気再解析データ(NCEP-NCAR Reanalysis 1、注2)に基づいて算出した2024年12月の925hPa気圧面における気温偏差(℃、色)。 偏差は30年(1981-2010年)平均からのズレと定義している。暖(寒)色系の場所は、30年平均と比べて、気温が高(低)いことを表している。黒色実線は12月の30年(1981-2010年)平均気温(℃)を表している。


2.南極における2024年12月の海氷状況

海氷の融解期にある2024年12月の海氷域面積は11月と同程度のペースで減少を続けていましたが、12月下旬にペースダウンして2010年代平均の海氷域面積と同等になりました(図5)。 その結果、2024年12月の平均海氷域面積は約9.4168百万平方キロメートルで、衛星観測史上10番目に小さい面積となりました(図6)。 海氷域および海氷密接度の空間分布を見ると、2010年代平均と比較してリーセル・ラーセン海の北側海域やロス海沿岸での海氷後退が速いことが確認できます(図7)。 一方、ウェッデル海では2010年代平均よりわずかに低緯度側に張り出していることがわかります。南極では2月下旬頃に海氷域面積の最小を迎えますが、残り2ヶ月弱で最小記録を更新するかどうか引き続き注意深くモニタリングを続けます。

図5:南極海氷域面積の変化。黒色波線:2010年代平均(2010年から2019年までの10年平均)、黒色実線:2023年10月1日から2024年2月29日まで、赤色実線:2024年10月1日から2025年1月4日までを示している。海氷域面積の計算には5日平均の確定値を使用した。


図6:12月の南極海氷域面積の変化(1979年から2024年までの46年間)。本記事では、1987年12月の海氷域面積のデータ数が2日のため、平均値の計算をせずに欠測とした。


図7:南極における2024年12月の(左)海氷域(海氷密接度15%以上)と(右)海氷密接度の空間分布。橙色実線は同月の2010年代平均(2010年から2019年までの10年平均)の海氷縁(海氷密接度15%で定義)を表している。


注1:海氷域面積
通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出しています。本記事では、5日平均の確定値を使用しました。 2日平均の速報値は、ADSをご参照ください。

注2:NCEP-NCAR Reanalysis 1
米国環境予測センター(NCEP)と米国国立大気研究センター(NCAR)で開発・提供されている大気再解析データ(https://psl.noaa.gov/data/gridded/data.ncep.reanalysis.html、Kalnay et al. (1996))。本記事では2024年12月の月平均データを使用しました。